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時々の初心忘るべからず

2021.06.14

日常作業

5年前の新潟県基板ネットワーク総会にて

豊田英史さんに御講演いただきました内容の続きになります。

改めて熟読し噛みしめて初心に帰って総会に臨ませていただきます。

 

以下より続きになります。

しかし、そんな私でも、私の中での基板事業というものが昨年度1年で大きく変化しました。

それは、感謝をされることです。

夏くらいから鈴木さんに『豊田さんこれお願いします。』とHDDが入った箱を手渡されました。それからは延々とHDDの解体をしていました。それとデスクトップPCを持ってきては豊田さんこのパソコンのHDDを抜き出して物理破損して下さい。となんで僕だけ皆と違うことをやらされるんだろうと思っていました。解体が下手くそだから僕だけ違うメニューなのかな・・・と。

しかも、ねじバカにしないようにドライバーはこう持つんだ。とか、HDDはこうやってもって箱を下において・・・とか不慣れな事をやり続けました。

1か月もたつと『よーし!もう大丈夫ですね!豊田さん僕と一緒に出張解体行きましょう!』と突然言われました。

僕は『無理無理!解体もままならないのに人様の目の前でお披露目するなんて・・・』と言いました。

しかし、鈴木さんは『大丈夫!僕がついて問題ないようしっかり指示を出しますから、本当に無理だったら僕が全部やるんで安心してください。』と言ってくれました。

半ば無理やり連れていかれることになるわけです。初めて出張解体に行った場所は診療所さんでパソコン15台くらいの回収でした。

鈴木さんの言う通り、出来ることが多く、分からないものもすぐに的確な指示を下さり、ものの45分で終了していました。

この時、僕なんかはと思っていた中に、僕にも・・・という光がポツリとともりました。

障がい者だから・・・から、障がい者にも・・・と、ここから意識が少しずつ変わっていった瞬間かもしれません。

それから出張解体に何度も何度も出かけました。何社かこなすうちにいつしか自信にもつながっていきました。不思議と『僕行きます!』と言えるようになっていました。

それは、きっとそこで解体をして回収した後に、『私こういうのうとくて・・・すごいですね』とか『これからも頑張ってくださいね』とねぎらいの言葉をいただき、単純に『ありがとうございました!』と感謝される。

僕の人生においてこんな感動はありませんでした。

病院でも冷ややかな目で見られ、家族にも失望され・・・そんな人生を生きてきた私には、この感謝の言葉は心の底からうれしいものでした。

そして、出張解体に行った足で、営業にも一緒に回らせていただきました。

一緒に行った営業先は1か月たっても2か月たっても成果は実らずにいました。

私は、何もできず鈴木さんの後ろに立っているだけでした。最後に大きな声で『一生懸命頑張ります!よろしくお願いします!』と深々とお辞儀するのが精一杯でした。

僕にも何か出来ることはないかと相談すると、鈴木さんは『もう大事な仕事をはたしていますよ!ありがとうございます。』と言われました。

確かに3か月・4か月経つと、一緒に行った企業様からぽちょぽちょと回収することが増えてきました。

鈴木さんいわく、『豊田さんはTさんより解体は下手くそかもしれません。Iさんより気回しが上手じゃないかもしれません。でも、持ち前の笑顔と誠実さがもうたくさんの人に伝わっているんです。適材適所。自分に持ち合わせた能力を発揮することが大切なんです。』と言っていました。

今では、出張解体と営業は僕の能力を精一杯発揮できる、発揮したい大事な仕事になっています。

僕は週2日半日だった通所が今では週5日の一日通所が出来るようになりました。これも、出張解体・営業と新たな可能性を見つけていただき、また重要な役割を担っていることからくる自信のお陰だと思っています。

この基板ネットワークの基板事業は私の障がい者人生では画期的で、障がい者が人のためになり環境のためにもなる。それだけではありません。私が一番驚いたのがこの解体事業に携わる方々が皆、私を一人の人間として必要としてくださることです。

今までたくさんの医療や福祉に助けていただきました。でもそこでは私が必要としていただけで必要とされたことはありませんでした。

『無理しなくていいですよ』『それはしなくていいですよ』『薬を飲んで休んでください』『危ないからやめておきましょう』

どこか、『あなたの力はもう必要ないですよ』と言われているようでなりませんでした。

しかし、基板の納品の際、たまたま居合わせた庄司さんに初めてお会いした時に、真っ先に私に向って『社会はエージ君を必要としています。これからもよろしくね!』と言ってくれました。

そして私に向って『友』と言ってくださいました。驚きでした。

今まで、病院でも施設でも職員さんの立場の人がそう言ってくださることは、まずありえませんでした。

心の中が急に熱くなり、今までにない勇気と力が溢れてきたことを今でも覚えています。

病院でも『はい、○○しましょうね~』『○○ですよ~』とまるで幼稚園児に話しかけているかのように扱われてきました。

私は障がい者でありますが、子供ではありません。一人の大人でもあり一人の人間です。

もし出来ることであれば、私たちの可能性や希望を伸ばしていただければと思います。

僕も支援者の皆さんを信じています。だから、支援者である方々も私たち障がい者を信じてほしいと思います。その上でお力をお貸しいただきたいです。

きっと私たちはそれに応えるために精一杯努力します。

人に必要とされることでこんなにも心が強くなると思いませんでした。

人から感謝されることでこんなにも心が満たされると思いませんでした。

この2つはどんな偉い人に相談しても、どんなに効く薬を飲んでも得ることはできません。働くことで得られるのだと知りました。

仕事は、労力を使い疲れる。だけではなく、生きるためのたくさんの力を得られるものなんだと知りました。

働けることの喜びをいただいた基板事業の仕事が私は大好きです。

また、本年度から家庭の経済的な理由ではありますが、一般就労を目指しています。もう諦めかけていたことですが、基板ネットワークのお陰で挑戦したい。と思えるようになりました。いつかは整体の仕事に就き、国家資格を取得できればなぁ・・・なんて思ったりもしています。

どんな仕事にも悪い面といい面があると思います。

そんな時でも自分の出来ない言い訳を探すのではなく、自分にも出来る希望を探していきたいと思います。

きっと苦しいこともあるでしょう。挫けて倒れてしまうこともあるでしょう。

そんな時はまた戻ってもいい。座り込んでいい。それでもやっぱり前を向いて歩き続けることを忘れずに生きていきたいと思います。

基板事業から働く喜び。感謝される喜び。人の役に立てることの喜びをいただきました。そして微力ではありますが必要としてくださった、基板ネットワークの皆さんには感謝を言葉で表せられません。

私のようにたくさんの障がい者がこの基板事業に救われたかと思います。是非これからもずっと続けていただきたいです。また全国に広がりたくさんの障がい者さんたちに自信と希望を届けていっていただければな。と思っております。

まだまだ、拙い私で恐縮ではありましたが、本日は、このような場でお話しさせていただきとてもいい経験になりました。本当にありがとうございました。

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